本研究は、ヘルシンキコーパス及び翻訳聖書その他を資料として英語史的観点から初期近代英語(初期アメリカ英語を含む)の語彙と統語法・文体を、主としてコーパス言語学的方法で分析することを目指したものであるが、実際の研究では、時代や対象を狭い範囲に限定せず、広い視野から研究を実施した。平成9年には「アンクレネ・リウレ」に関する国際シンポジウムを大阪大学で開催し、そこでの議論を各発表者の協力のもとに引き続き増補改訂のうえ、平成11年度末の刊行に向けて準備作業を進めてきた。また、平成10年には、上記シンポジウムから更にテーマを広げて「大阪大学・コペンハーゲン大学学術交流プログラム記念シンポジウム」を開催し、イギリスとデンマークの言語・文化など幅広い内容の議論なを行った。これは、本研究組織からの提案により、大阪大学言語文化部英語教育講座主催として実施されたものである。以上の活動の他にも、本研究のメンバーは次のような研究活動を行った。 渡辺は、CD版OED等を用いて、英語史、辞書学、Beowulfなどに関する多方面にわたる研究を行い、トウルク大学、ヘルシンキ大学、コペンハーゲン大学等での学会発表及び学術誌上での発表を行った。チェタステーンは、阪大を訪問し、今井・渡辺他と資料の処理に関する協同研究を行った。また、昨年度に引き続き、米国を訪問し、今井・渡辺他と資料の処理に関する共同研究を行った。また、昨年度に引き続き、米国を訪問し、主として文献によって発音及び語彙に関する初期アメリカ英語の研究を行った。その研究の実施には、フィンランド訪問時ヘルシンキコーパス関係者と行った討論および今井、渡辺のデンマーク訪問時の討論と資料収集の成果が活用された。今井は、ヘルシンキコーパスについて、その史的研究への利用方法の検討、及び中英語ロマンス作品の表現に関する語彙の研究を継承した。
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