研究課題
国際学術研究
長い日中関係に最も重要な役割を果たしてきた中国の沿海地域、とりわけ山東・江蘇・浙江・福建の各地における日中交流史上の遺産を洗い直し、地域性、地方差を勘案しながら、新しい問題提起を試みようとするのが主目的である。この主旨に従い、今回の調査は山東半島の青島に始まり、淮水河口の連雲港に至る海岸線と、淮安より洪沢湖周辺地域の旧運河沿いの諸地域、さらに揚州より鎮江に至るルートを調査した。近年の日中関係史で盛んに取り上げられる徐福伝説の舞台となった瑯〓台周辺、日中交渉史の隠れたルートの一つである連雲港と『西遊記』を育んだ文学のメッカ花果山を踏査。淮南では「琉球国京都通事諱文英鄭公之墓」の所在を探り、淮陰県図書館の裏地にこれを発見した。乾隆五十八年(1793)に入朝した通事鄭文英が同年十一月十日この地で病死し埋葬されたもの。その経緯については研究分担者の松浦章氏によって『南島史学』51号に「清乾隆五十七年貢期の琉球進貢と鄭文英の客死」と題して発表公刊が予定されている。一方、入唐・入宋の際、必らず使用した旧運河には注目すべき関係遺址が多い。その一つの泗州(現〓〓県)普光(照)王寺は僧伽和尚信仰の根本道場であるが清初、淮水の氾濫により水没したままとなっている。唐以降、治水、水運の神として信仰を集め、入唐・入宋僧達の記録にみえており、日本にも観音信仰とともに導入された事実がある。今回、水上に現われた明租陵とあわせ周辺の調査にあたった。揚州大明寺、鎮江金山寺などを含め、日中関係史に見逃せない寺院や運河、梁津さらに日本文化に大きな影響を与えた『文選』ゆかりの焦山、米〓墓など今後の研究に楽しみな調査結果が得られた。
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