研究課題
本計画は、平成8年2月に調印されたコレージュ・ド・フランス日本学高等研究所と国文学研究資料館の学術交流協定に基づく3年にわたる共同研究の第2年度に当たる。研究所からはF・ジラール、J・チュデイン、S・サカイの三氏が来館、当館がらは松野館長が、また別途経費で新藤文献資料部長・安永教授が渡仏して研究、調査に当たった。フランス側の三氏は当館の原本とマイクロフィルムを利用しての研究で、既に公刊されている学位論文を発展させる第2論文集をまとめるための来邦で、当館の所蔵資料及び共同研究は大いに貢献した模様である。チュディン氏は、幕末演劇に関する第1論集に次ぐ近代開化期演劇についての論集のまとめ、サカイ氏は、好評を博した近代大衆文学についての学位論文集に続いての明治期大衆小説の論集のまとめに成果をあげた。また、ジラール氏は、「道元の和歌」についての研究を行った。松野・新藤は、在仏日本文学資料の調査・研究とフランス研究者との共同調査・読解を行った。昨年リヨ市で発見した(パリ移転以前の)ギメ美術館旧蔵書群『絵本言葉種』(西川祐信流画)、『絵本武者七福仁』(二世奥村政信画)等の国内未紹介本を初めとする諸本は、この研究がきっかけとなってパリのギメ美術館に100年ぶりに戻ることになった。共同研究がもたらした成果としてよろこばしい。今年新たに発見したものとしては、『絵本寝覚種』『絵本玉萬』『絵本雪月花』(いづれも西川祐信流画)『伽婢子』などで、国内の伝本が稀少なものが多く、本文校訂等に価値の高い本が多い。目下、書誌的研究を進めているところであり、成果を公刊する予定である。また、安永教授はコレージュ・ド・フランスのドラエ教授と共同でインターネットによるデータベースの双方向利用の可能性を検討して成果をあげた。双方の研究とも相互に共同討議の場に供し、結果は後日公表したい。