一橋大学とパリ第一大学パンテオン・ソルボンヌは、1996年3月、両大学間の国際交流協定を締結し、相互の学術協力を促進することとした。本研究は、その一環として1997年から1999年までの3年間にわたって行われたものである。その成果は、1997年7月に東京で開催された国際シンポジウムと1998年のパリにおける出版によって具体的に示されている。本研究のテーマは、地域的経済協力機構であるEU、NAFTA、APECの比較制度的考察であるが、これら三つの地域的経済協力機構は相互に著しい制度的な格差と発展の速度における格差、活動の活発の度合いにおける格差がある。いうまでもなく、EUと他の二者とのあらゆる面における格差が著しいのである。とくに、EUに関していえば、1997年のEU基礎条約(マーストリヒト条約)の改正によるアムステルダム条約の成立があり、1999年1月1日には単一通貨ユーロの制度が実施に移された。さらに、2000年には、多数の新規加盟国の加入に対応するために、再度、EU基礎条約の改正作業が行われ、ニース条約が成立の運びとなった。以上のように活発な活動を続け研究対象がきわめて豊富なEUに対して、一方におけるNAFTAおよびAPECの活動はきわめて活発さを欠き理論的な研究対象とする事項に乏しかった。そのため、本研究におけるウエイトがEU偏重となったことは否めない事実である。
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