研究概要 |
[1]金属錯体が示す生理活性は他分子との会合体形成,分子認識などの側面を有し,熱力学的に解明されるべき現象である。名古屋大学研究グループは分子認識を可能にする側鎖官能基を有するアミノ酸含有三元白金(II)および銅(II)錯体を合成し,スペクトル,溶液平衡の解析,X線結晶構造解析を行い,錯体分子内での芳香環スタッキング,水素結合の存在を結論した。芳香環スタッキングについては金属イオン-芳香環相互作用を含むこと,銅-インドール環相互作用はη2型結合を形成し,アセトニトリルと置換しうることを見出した。 [2]これらの諸点について,平成11年9月11日から20日まで山内,廣田がカターニア大学に赴き,議論し,種々の測定手段について打合せを行った。平成12年2月17日から23日までアレーナ教授を招聘した。アレーナ教授はカロリメトリーによる熱力学的パラメーターの測定結果をまとめ,論文の一部として持参した。また,当方のX線解析結果に基づいたガウシアン計算を行い,溶液中での会合体の構造を算出した。詳細な打合せを行った結果,白金錯体による芳香族分子の会合体形成について,錯体の構造と熱力学的パラメーターの間に強い相関が存在することが明らかとなり,分子認識の原動力である芳香環スタッキングと水素結合の効果的組合せが重要であると結論された。 [3]研究をまとめるため,平成12年3月9日から16日まで山内がカターニア大学に赴き,共同研究の最終打合せと論文原稿の作成を行った。分子間相互作用と分子認識能発現の観点から,溶液平衡,カロリメトリー,NMRスペクトル,結晶構造解析等の実験データを総合的に解析し,分子動力学計算等の理論計算からの情報をふまえて,溶液内での生理活性など分子機能発現に至る過程をより詳細に明かにすることができた。
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