研究概要 |
南京大学を拠点として,下揚子地塊の安徽省巣湖周辺(平頂山,亀山,鬼門関)ならびに南陵近郊のY山地域の地質予備調査と岩石試料の採集を行った.今年度は,生物の大量絶滅が起こったとされる二畳紀/三畳紀境界付近に重点を置き,二畳紀最後期の大隆層に焦点を絞り,放散虫化石抽出実験を行った.しかし,この地域の大隆層からは,いまのところ属・種の判定ができるほど保存の良い放散虫化石個体はほとんど得ていない.今回の調査地域における大隆層からの放散虫化石産出の報告がこれまでにもなかったのは,あまりにも保存状態が悪いためかもしれない.保存状態が悪い原因の一つとして,安徽省の南部地域に大規模に分布する花崗岩の噴出によりその周辺では放散虫化石は変成・再結晶作用を受けていることが考えられる. 次年度に予定している調査地域である江蘇省の大隆層からはこれまでに2編の放散虫化石産出の報告がある(Nagai and Zhu,1992:Zhang et al.,1992).二畳紀/三畳紀境界付近,大隆層の放散虫化石に関しては江蘇省に期待したい. 江蘇省南京市郊外の湯山地区の大隆層からは,研究代表者は微化石を既に得ている.その外形は中生代の放散虫Dictyomitra属に似ているが,costaが太くそれらの間にあるporeはほとんど閉じてる点で異なっている.この化石が放散虫であるのか,または有孔虫であるのか,現在,南京地質古生物学研究の楊群・王玉浄両博士と検討中である. なお,二畳紀中期の孤蜂層から採集した岩石試料からの放散虫化石抽出実験をひきつづき実行する予定である.
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