研究概要 |
昨年にひきつづき南京大学を拠点として,下揚子地塊の安徽省巣湖周辺(平頂山,庵門口,馬背山,鬼門関)ならびに江蘇省南京市郊外(孔山,天宝山)の地質調査と岩石試料の採集を行った。 昨年予備的に採集した安徽省巣湖市亀山麓の庵門口の孤峰層のチャート3試料から二畳紀中世の保存の良い放散虫化石を得た(Nagaiet al.,1998)。この地域の孤峰層は古い方から次の3つの放散虫化石帯に分帯されている。 (1) Pseudoalbaillela Longtanensis-Ps.fusiformis Zone, (2) Follicucullus monacanthus Zone, (3) Fo.scholasticus-Ruzhencevispongus uralicus Zone. 上の予備調査では(2)のFollicucullus monacanthus Zoneの放散虫化石が得られなかったので,平成10年度はこの庵門口の露頭に重点を置いて詳しい放散虫化石解析をする予定で約50の試料を採集した。この試料からの化石抽出実験は現在実行中である。 孤峰層のチャートは,日本の美濃帯のチャートが硬く緻密であるのに比べて,表面が疎密で見かけは頁岩に近く,色が黒いと言う特色があり,化学分析ではSiO_2が90%以上ある堆積岩である。このチャートがどのような堆積環境下でできたのかをさぐるために,放散虫化石解析とは別に,化学分析の手法を用いることも検討している。 なお,二畳紀最後期の大降層からの放散虫化石については,昨年は不成功に終わったが,今年度採集した平頂山ならびに鬼門関の試料から若干得られているので,今後さらに,ねばり強く化石抽出実験を継続する予定である。
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