研究概要 |
本研究は、南京大学を拠点として、揚子地塊の東端に位置する中国南東部の安徽省、江蘇省に焦点を定めて地質調査と岩石試料採集を行い、放散虫解析を試み、あわせて古環境解析を行うことを目的としている。 調査地域は、安徽省巣湖周辺(平頂山、亀山、鬼門関、馬背山、走馬嶺)、南陵近郊Y山地域、経県(昌橋)と銅山・黄山周辺、および江蘇省南京市郊外(湯山、孔山、天宝山)である。いずれも二畳系に重点を置いた。 この研究で得られた新知見として以下の3つがあげられる。 1.平頂山の二畳紀最後期とされている大隆層下部層の珪質泥岩からAlbaillella sp. Cf. A, xiaodongensis,Follicucullus sp. Cf. F. orthogonusなどを得た。その結果、これまで Changxingian(late Late Permian)とされていた巣湖地域の大隆層下部層は Wujiapingian(eary Late Permian) にあたるとの新知見を提出した(Kametaka et al., 1999)。 2.庵門口の二畳紀中期の弧峰層の層状珪質岩のなかに、多孔質(菱形の孔)の表面を有する特殊な珪質岩(Nectic Chert)が存在し、走査型電子顕微鏡観察や化学組成分析を行った結果、この珪質岩は、泥質石灰岩のような石灰質の堆積物が後に珪質岩(Quartz)に置き換えられたものであることを明らかにした(朱ほか1999)。これは堆積環境の推定に役立ち、今後の研究の展開が期待される。 3.南京市郊外湯山地区の後期二畳紀の大隆層から新たな形態の放散虫化石を発見した。外形が中生代の放散虫化石Archaeodictyomitra属に似ているがcostaが太くそれらの間にあるporeがほとんど閉じている点で異なっている(Nagai et al., 1999)。
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