研究概要 |
本年度も、アメリカ合衆国における非定常はく離に関する実験、および数値解析研究の調査を行った。その結果、興味深い研究として、多数の小さくて細い板を翼後縁に付加し、その板の動きを独立に制御することではく離の発生を制御しようとする試みが行われ始めていることがわかった。 また、本研究における具体的研究成果は以下のものである。 1)静止状態時にはく離が発生していない迎え角でピッチング運動を行う場合は、翼後流には明確なカルマン渦列を形成する。この場合の非定常揚力は、静止状態時の定常揚力まわりを変化する.また,翼形状による違いは小さい. 2)無次元角速度が大きくなるにつれ,翼背面上のはく離流脈にケルビン-ヘルムホルツ不安定波が明確に表れ,この不安定の発達過程において強い時計回転を持ち,翼背面上に付着する. 3)また、翼背面上に再付着するためには,翼前縁からの流れ(不安定波,渦)が主流程度の速度をもち,翼背面に向かって移動する.これは翼の前縁形状,迎え角また無次元角速度から予測することが可能である. 4)翼背面上に大規模な逆流域が生成されない翼形状、及び迎え角の場合には,翼背面上で再付着現象が発生する.この再付着渦が翼背面上から離れ,翼後縁から発生する反時計回転方向のはく離渦と干渉することにより,翼5弦長後方には渦塊が生成される独特のフローパターンとなる. 5)低レイノルズ数領域のピッチング運動翼においても,翼前縁形状ははく離渦の挙動に大きな影響を与えるパラメータの一つである.
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