研究概要 |
近年,分析機器の発達により,ミネラルの研究分野が大きく進展しつつある.エネルギー分散型X線分析法(EDX)やシンクロトロンにより,植物の超微小領域におけるミネラルの分布状態が把握できるようになった.これらの分析機器を植物栄養の分野に応用し,植物の根によるミネラルの吸収,植物中での転換,移動がどのように進むかを調べた.これらの機器の分析方法を確立するため,EDXエネルギーについてはオーチャードグラスのマグネシウム含有率に対する個体選抜に応用する観点から,シンクロトロンはミネラルの酸化状態を調べる観点から行った.一方で,植物栄養と病害の交互作用を,土壌由来植物病菌の生態,植物の根によるミネラル吸収の有効性,及びこれに関係する要因解明を根圏の土壌化学性,物理性の観点から行った.オオムギを人工気象室内で水耕栽培し,鉄(Fe)欠処理で引き起こされるFe欠乏症とマンガン(Mn)過剰処理により引き起こされるFe欠乏症を比較した.アルミニウム(Al)は土壌の酸性化に伴い土壌溶液中に溶出し低濃度でも植物の生育障害を起こすため,好酸性従属栄養細菌を用いて生育に対する影響を検討した.近年,作物の栽培システムが環境に与える影響に関心が持たれていることから,アルファルファを対象にカリウムとリンが作物の収量,牧草の栄養価,永続性に及ぼす影響を調べた.表面流去水や地下水の品質に関しては,水源の硝酸態窒素汚染を低下させるために,窒素の分施と前作の窒素施用量がトウモロコシの収量と表面流去水への窒素流出量に及ぼす影響を調査した.環境保全の観点から,家畜排泄物の環境への負荷の大きさを定量的に把握するために,我が国の酪農経営における窒素循環量を推定するとともに,そのシミュレーションモデルを作成した.
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