研究課題/領域番号 |
09045074
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
吉川 尭 北里大学, 獣医畜産学部, 教授 (80050467)
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研究分担者 |
吉川 博康 北里大学, 獣医畜産学部, 助教授 (70101516)
小山田 隆 北里大学, 獣医畜産学部, 教授 (80050665)
川村 清一 北里大学, 獣医畜産学部, 教授 (60050530)
椿 志郎 北里大学, 獣医畜産学部, 教授 (70050507)
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キーワード | 心筋症 / セレニュウム / ビタミンE / 克山病 / シカ |
研究概要 |
前年度の調査において、中国東北部で多発している地方病性心筋症の病理学的特徴は、心筋におけるミトコンドリア膜の障害を基本的病変として展開される心筋線維の壊死性変化で、当地域で発生しているヒトの克山病に酷似していることが考察された。そして原因学的にセレニュウム・ビタミンE欠乏が強く示唆された。本年度は全身病として肝臓病変に的を絞り検討を加えた。検素材料は1週以内に発症した梅花鹿計25例である。いずれも明らかに脂肪化とは異なる著しい肝臓の黄褐色化を呈し、光顕的検索では肝細胞の空胞変性、水腫性膨化、硝子物形成および好塩基性顆粒の沈着が共通的に観察された。細胞質内の好塩基性顆粒は、各種特殊染色態度から脂質古来の消耗性色素の性格を示し、微細構造学的には二次ライソゾームの形態であることが明らかにされた。すなわち脂質を含む細胞成分の分解と思われる密な顆粒状物質およびミエリン様の密集した膜状配列を呈する種々の残液体として観察され、これらはリポフスチン・セロイド色素とみなされた。また肝細胞の空胞変性および空胞内糸状物、絮葉状物が共通的に認められたことは、これら細胞質の変化とリポフスチン・セロイド色素の沈着が密接に関係し、膜系小器官の崩壊に基づく変化であると解された。いっぽう、免疫組織化学的ならびに微細構造学的に空胞ないし空胞周囲にカタラーゼ陽性のペルオキシゾームが多数見出されたが、これはペルオキシゾームのもつ抗過酸化作用による膜障害に対する反応性の変化とみなされた。以上より、検索例で認められた重度の肝細胞変性はCeroid・lipoidosis(セロイド・リポイド沈着症)としての性格を強く示唆しており、生前の血液生化学検査におけるセレニュウムの低値と密接な関係があると推察された。
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