研究概要 |
口腔白板症は口腔粘膜の代表的な前癌病変とされ,5〜10%の悪性化率が報告されてきている。口腔白板症の発生部位,臨床像,病理組織像,発生誘因などを悪性化との関連でとらえ,日本とデンマークで比較し,高い悪性化潜在能を持つグループ(high risk group)を明確にすることが本研究の目的である。この共同プロジェクト実施のための東京医科歯科大学歯学部とコペンハーゲン大学歯学部との合同会議を開催し,日本とデンマークにおける症例の臨床像および病理組織像をそれぞれ提示し,調査項目(性別,年齢,主訴,初発症状,病脳期間,発生部位,大きさ,境界明瞭度,臨床型,カンジダ菌感染の有無,喫煙,飲酒その他生活習慣,機械的刺激因子,上皮性異形成の程度とその推移,LCP分類,治療法,治療結果,悪性化までの期間)を設定し,口腔白板症プロトコールを作成した。これをもとに白板症症例の分析を行い,東京で開催される第二回合同会議では,このデータとコペンハーゲン大学のデータと対比させ共通点,相違点を確認した。コペンハーゲン大学の白板症症例は,頬粘膜の頻度がもっとも多く,口底,歯肉と続いているのに対し,当科では,歯肉,舌,頬粘膜の順となっている。また,コペンハーゲン大学の症例では,悪性化率の高い臨床型が,順にerythroleukoplakia,3.6%,homogeneous type,0.9%であったのにたいし,当科では,それぞれ14.7%、3.1%となり,違いがみられた。これらの差は,二国間の生活習慣の差など様々の要因が関係していると思われるが,更なるデータの集積が必要と思われる。データ集積に際し,コンピューターによるデータ入力,集計,処理,および大学間のデータ交換を容易にするため,白板症プロトコールの記載様式を項目チェック法からアルファベット記入式に変更することした。これにより電子メール等でデータを大学間相互で適時交換し,集積,比較解析が行い易くなり,今後の2大学間の口腔白板症研究に寄与するものと思われる。
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