研究課題
1. 正常脳の海馬及び小脳からG蛋白質を介する低分子蛋白質(ペブチド)性の受容体をクローニングしたところ、カナビノイド及びニューロペプチドYのレセブターを新しく発見することができた。リガンド解析を行っている。2. 成長ホルモンのmRNA転写と蛋白質合成が、免疫抑制剤であるFK506,cyclosporin により、促進されることを示し、そのメカニズムとしてカルシニューリンの抑制が関与していることを証明した。3. 虚血性神経細胞死を起こした海馬領域に、胎仔の海馬神経細胞を移植すると、記憶・学習機能の回復がみられた。さらに、未分化の神経細胞が移植部位の環境によって、その環境に応じた機能を持つ細胞に分化していくことが推察された。虚血性脳障害後の機能低下の治療として、神経細胞移植が有効であることを示した。4. 虚血後、低体温にすると虚血性神経細胞死が抑制されることが分かっている。しかし、低体温の条件によってはその保護効果が低下することがある。本年度は低体温の条件、特に復温の条件とその保護効果の関係について詳細に検討した。速い復温では低体温の神経保護効果が低下し、この際、血流と代謝の不均衡による相対的虚血が起こっていたことが分かった。これを防ぐために、階段状の復温が有効であることを示した。5. Qdk5/p35の活性を特異抗体を用いた免疫沈降法を用いて測定したところ、アルツハイマー海馬においてコントロールに比べて、約30%高い活性が検出された。また前脳においては、大きな差は認められなかった。高度のアルツハイマー脳においては、かえって活性は低下した。Cdk5の蛋白質としての発現量を、Western blot法により解析したが大きな差は認められなかった。むしろ制御タンパク質としてのp35の量において、増加が認められ、酵素活性上昇のメカニズムとして重要と思われた。
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