研究概要 |
タイ国におけるAIDSに合併した呼吸器感染症治療法と予防対策の研究 タイ国においては最近10年間にHIV感染者が増加し、AIDS患者に合併した呼吸器感染症が急増している。我々はチェンマイ大学との学術交流協定に基ずいてこれまでタイ国北部地域における急性呼吸器感染症治療法の研究を行ってきた。特に平成9年度からはAIDSに合併した市中肺炎に焦点をあて、起炎病原体と治療法の実態調査および治療効果判定を行っている。昨年度に引き続いて我々はHIV感染者に合併した肺炎症例において、適切な検査を施行し、かつ原因病原体を明確にすることで適切な抗菌化学療法を確立し、AIDS患者の予後を改善することを目的として以下の検討を行った。1997年4月よりチェンマイの第一線病院であるナコンピン病院において入院治療を行ったHIV感染者に合併した肺炎症例について、胸部X線写真、喀痰検査(一般細菌、抗酸菌等)、血液培養、血液生化学検査を行い、臨床症状とともに経過を観察した。細菌学的検査はチェンマイ大学附属病院中央検査部にて行い、起炎菌の薬剤感受性(MIC)は長崎大学熱帯医学研究所において施行した。計127例の症例が検討され、病型は肺炎70例、カリニー肺炎24例、肺抗酸菌症20例、肺ノカルジア症7例、肺化膿症4例、胸膜炎2例であった。CD4,CD4/CD8の平均値はそれぞれ46.9/mm^3,0.08で、喀痰中分離菌はHemophilus influenzae23例,Pseudomonas aer uginosa9例,Rhodococcus equi6例,Streptococcus pneumoniae6例,Staphylococcus aur eus6例の順に多かった。合併症ではPenicillium mar neffei感染症9例、髄膜炎4例(クリプトコッカス性3例、結核性1例)、敗血症3例が起こり、16例(12.6%)は死亡した。
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