研究課題
1)ヒト培養細胞HEK293の抽出液中でアクチン・コフィリン複合体に結合している2つのタンパク質p65とp55を見いだしていた。p65はAip1であることを同定し、昨年度報告した。次に、p55がアデニル酸シクラーゼ結合タンパク質CAP1であると同定した。CAP1はコフィリンによるアクチン繊維の(-)端からの脱重合を促進することを見いだした。また、Xenopusの卵抽出液からも、アクチン・コフィリン複合体に結合する端としてCAP1を同定した。2)アフリカツメガエル胚を使ってコフィリン脱リン酸化にかかわるフォスファターゼを調べた。RhoAの標的ROCKキナーゼの阻害剤Y27632は、コフィリンの脱リン酸化を阻害した。一方、1型と2A型の阻害剤オカダ酸と2B型の阻害剤であるcypermethrinはコフィリンの脱リン酸化を阻害しなかった。これらの結果、ROCKは1型でも2型でもないフォスファターゼの活性化を支配していることが示された。3)細胞性粘菌より第3番目のコフィリン遺伝子COF3を単離し、またタンパク質Cof3を作製精製し、その作用を解析した。Cof3は増殖期の細胞では発現していないが、飢餓状態によって胞子形成が誘導され、集合体を形成するために運動する細胞に発現するのを見いだした。Cof3には他の多くのコフィリンファミリーでリン酸化を受けるN端近傍のセリンがなく、別のタイプの機能制御を受けているらしい。COF3遺伝子を破壊しても細胞の増殖には影響を与えなかったが、走行中の細胞のアクチン構造に変化が認められた。4)マウス後根神経説(DRG)の初代培養を行い、NGFによる突起伸長を誘導し、次いでセマフォリンによってその縮退を調べる系を使った。その結果、セマフォリンによって、局部のコフィリンのリン酸化が増加した(Wブロッティングでも、抗リン酸化コフィリン抗体による蛍光染色によっても)。細胞膜浸透性のコフィリンリン酸化部位のペプチド添加によって突起の縮退が阻害された。これらの結果、コフィリンのリン酸化は神経突起の縮退にも必要であることが明らかとなった。
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