研究課題/領域番号 |
09102001
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
福井 孝志 北海道大学, 量子界面エレクトロニクス研究センター, 教授 (30240641)
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研究分担者 |
本久 順一 北海道大学, 量子界面エレクトロニクス研究センター, 助教授 (60212263)
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キーワード | 有機金属気相成長 / 選択成長 / マスク基板 / 量子ドット / 量子細線 / 単電子素子・回路 / クーロンギャップ / 論理回路 |
研究概要 |
平成11年度は、有機金属気相成長(MOVPE)法を用いた選択成長の機構について明らかにすると共に、InAs量子ドットの位置と個数(密度)を独立に制御する新しい手法を提案した。また、InAs量子ドットの物性を光学的な手法により評価すると共に、量子ドットを利用した単電子トランジスタ・単電子回路の特性改善に成功した。 まず、周期的なライン&スペース(L&S)パターンを有するGaAs基板に対して選択成長を行い、ファセットで覆われたGaAs細線構造を作製した。この時、SiNマスクとファセットからの拡散により、細線の成長速度が時間と共に増大すること、および成長の自己停止機構により頂上に横幅の非常に均一な構造が形成されることを見いだした。特に、簡単なモデルとの比較により、マスク・ファセットからの拡散による成長速度への寄与を定量的に明らかにした。また、L&Sパターンの一部に正方形の窓開けパターンを付加した、特殊なマスク基板に対し、GaAsおよびInAsの選択成長を行った。その結果、GaAs・InAsの成長量、成長温度等を適切に制御することにより、微小なGaAs(001)面に、InAs量子ドットが、位置と共に、個数(1〜数個)を制御して形成可能であることが明らかとなった。 また、GaAsピラミッド構造上のInAs量子ドットの光学特性を、顕微フォトルミネセンス(PL)および顕微フォトルミネセンス励起スペクトル(PLE)測定により評価した。その結果、半値幅の非常に狭い、基底準位間および励起準位に起因する発光を観測した。さらに、顕微PLE測定の結果をもとに、障壁層から量子ドットあるいは量子ドット中での光励起キャリアの緩和過程について明らかにした。 次に、昨年度までに確立された技術を用いて、単電子トランジスタと量子細線トランジスタから構成される論理回路(インバータ)の試作とその特性改善を試みた。具体的には、量子ドット形成の主要メカニズムとなる、成長膜厚の変調や、側面からの空乏層の効果をより顕著にするために、新しいマスクパターンを設計し、そのパターンを有する基板に選択成長を行い、単電子トランジスタを形成した。その結果、従来と比較して、非常に明瞭なクーロン振動と、大きなクーロンギャップ、さらに、大きな量子化エネルギーを有する、単電子トランジスタの電気伝導特性を確認した。そして、単電子トランジスタの性能向上に対応し、回路の入出力特性が大幅に改善されたことを実証した。
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