研究概要 |
これまで開発してきたホログラフィック電子顕微鏡像再構成法を用いて,ATP存在下での太いフィラメントの無染色凍結標本のクライオ像から三次元像を再構築した。その結果、初めてミオシン分子の立体的双頭構造を観察できた。太いフィラメント中のミオシン分子の配列にはラセン対称性があるが、三次元再構成する際には、異なるベッセル次数の項に分離する必要がある。そのためのプログラムを開発して用いた。ミオシン分子の二つの頭部は共に太いフィラメントの長軸に対して垂直に配向していた。太いフィラメントの骨格部分が、三本のミニフィラメントからなることも可視化できた。 これまで筋収縮の制御機構については、細いフィラメント内でのトロポミオシンの位置決定が重要である。細いフィラメントの無染色水和標本の構造研究を進め高分解能化を図った。まずアクチン・フィラメントのラセン対称性からのずれを検出し、方位角方向には対称性からの離反があることが分かったので補正し、逆投影法で三次元像を再構築した。フーリエ変換の位相角の再現性を吟味したところ、1.8nmの分解能まで十分な再現性があり、無染色水和標本でのトロポミオシンをほぼ連続的紐状の領域として初めて可視化できた。アクチン分子間の接触の強い箇所を固定できたが、疎水プラグと呼ばれる部分はこれに含まれなかった。 第4サブドメインに突然変異を導入したしたキメラアクチン(QTAAS…>KAYKE)についての解析を進めた。ミオシンS1による活性化もより協同的になっていることが新たに分かった。またこの5つのアミノ酸残基の内で始めのQTAまたは最後のASを保存すると、トロポミオシン結合能は野生型と同じであるが、QTA…>KAYのミニキメラ置換で、Caによる活性化はより協同的となった。
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