研究概要 |
トロポミオシンの位置の筋収縮制御機構の解明に重要であるが、弛緩が生じる低Ca濃度では位置決定が困難であったが、アクチン・フィラメントのラセン対称性を仮定せず逆投影法で三次元像を再構成しその位置を決定できた。ラセン対称性を仮定した従来の方法ではトロポニンの寄与を過小評価しており、そのために結果が異なることが分かった。トロポニンの位置と構造も初めて明らかし、それらがCaによって変化することを見いだした。トロポニン(C+I)をアクチン・トロポミオシンにアクチンとの分子比を1:1で結合させるとラセン対称性を仮定できるようになり、トロポミオシンとトロポニン(C+I)がCa濃度で変化し(Ishikawa & Wakabayashi,1999)、上記のトロポミオシンの位置に関する新しい結果とも一致した。アクチンのN端のアセチル化がミオシンとの弱い相互作用に重要であることを直接的に示した(Abe et al.,2000)。アクチン第4サブドメインに突然変異を導入したキメラアクチン(QTAAS→KAYKE)は、トロポニン・トロポミオシンの共存下で高Ca濃度でのミオシンS1のATPaseをより強く活性化する。このキメラ・アクチンをX線結晶解析し野生型と比べた。導入したTyr230が疎水領域の中に割り込み、Leu236が溶媒に露出するように押し出され、疎水領域自身も溶媒により多く露出する(Matsuura et al.,2000)。この構造解析の結果はA230→Yの単一変異でも高い活性化が得られるはずであることを示しており、実際そうであることを確認した(Saeki & Wakabayashi,2000)。さらに、Leu236をAlaに変えるとさらに疎水領域の溶媒露出度が増し高い活性化が得られることが予想され、実際にそうであることを二重変異によって確認した。
|