研究概要 |
蛋白工学とクライオ電子顕微鏡法を結びつけ、モーター機能とその制御の分子メカニズムを明らかとすることを目標とした。高コヒーレンス電子ビームによりコントラストを向上させたクライオ電子顕微鏡像を新しい画像処理法で処理し、アクチン、トロポニン、トロポミオシン、ミオシンなどの相互立体関係を高分解能で明らかにしようとした。 単粒子解析法を導入し、細いフィラメントの全体構造を初めて明らかにし、Caによりトロポニンに大きな構造変化が生じ、トロポミオシンの移動は分子のC端約3分の1に限られることを初めて示した(Narita et al.,論文投稿中)。 三次元再構成像の解釈を助けるために、蛍光団の間の距離情報からそれらの三次元的位置を求める方法を開発し、ミオシン頭部のATPによるレバー・アームの動きを三次元的に明らかにし(Suzuki et al,1998;Yasunaga et al.,2000)、トロポニン・トロポミオシンに標識された蛍光団の細いフィラメント上での三次元的位置を決定した(Narita et al.,論文投稿中)。Caによる活性化が増強されるミュータント・アクチンを見いだしていたが、それがチロシン230の導入のためであることを突き止め(Saeki et al.,2000)、その構造をX線結晶解析しCa活性化の際にアクチンの第4サブドメインの疎水ポケットの露出がCa活性化に重要な役割を果たすことを示した(Matsuura et al.,2000)。 エネルギー・フィルターを用いたクライオ電子顕微鏡法の開発が完了し、細いフィラメトやアクチン・ミオシン複合体の高分解能での構造研究に活用できるようになった。 本特別推進研究の成果は、ゴードン研究会議(1999)での招待講演や、Nature誌NEWS & VIEWS欄(Nature,396,317-318(1998),by A.F.Huxley)を通して紹介されている。
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