1。輸送体の調節機構の解明:病気の原因遺伝子であるAQP2とClC-5に付着する蛋白の検索を行ない、AQP2に関しては、PDZドメインにAQP2が付着することを証明した。また既知のPDZ蛋白と類似の蛋白がAQP2の存在部位である集合管細胞に存在することを確認した。AQP2のC末端のGSTのfusion蛋白を用いて、この付着蛋白を同定中である。ClC-5については、ClC-5のC末端を被標的としたtwo-hybride法により、いくつかのクローンを単籬した。これらの蛋白が直接ClC-5と結合し、どのような機能を果たしているかを検討中である。 2。輸送体の調節異常と病態の関連の明確化:AQP2のC末端側の変異により優性遺伝を示す腎性尿崩症の3家系見つけ、その変異の発現実験を行なった。いずれもframe shiftによりC末端測に余分のアミノ酸が伸びる変異であり、変異はヘテロで存在した。アフリカツメガエルでの発現において、変異蛋白は細胞膜表面への輸送が障害されていた。優性遺伝を示すためのdominant negative効果は正常AQP2と変異AQP2が4量体を形成することにより引き起こされていることを証明した。機能が明確でないClC-3についてはノックアウトマウスを作成した。生後の発育不全、視力障害、行動異常のphenotypeを示した。その細胞内メカニズムとしてClC-3が小胞のクロライドチャネルとして働き、その異常により小胞内酸性化が起こらなくなるためと推定された。このマウスの症状に対応するヒトの病気を検索中である。 3。腎臓尿細管特異的発現機構の解明:腎臓の輸送体は、腎臓内のネフロンに部位特異的に発現しており、この部位特異的発現機構の解明は、高度に分化した腎臓の機能の研究を行なう上で必須である。CLC-K1とCLC-K2のプロモーター領域にreporter geneをつないだ遺伝子を導入したトランスジェニックマウスを作成を行なった。CLC-K1ではヘンレ上行脚の細い部分に弱い発現が、ClC-K2ではヘンレ上行脚の太い部分に強い発現を認め、これらのセグメントの特異的プロモターを得ることが出来た。
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