ダークマターアクシオンの探索

1999 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 09102010
• 研究機関: 京都大学
• 研究代表者: 松木 征史 京都大学, 化学研究所, 助教授 (50037941)
• 研究分担者: 舟橋 春彦 京都大学, 理学研究科, 助手 (00283581) ; 山本 克治 京都大学, 工学研究科, 助教授 (90191395)
• キーワード: 宇宙 / ダークマター / アクシオン / リドベルグ原子 / マイクロ波検出 / マイクロ波共振空胴

研究概要

1)新探索装置(CARRACK2)では、より効率の良いメタルポスト方式で空胴共振周波数を変化させている。リドベルグ原子励起用のレーザーと熱原子ビームはクライオスタット下部より水平に導入し、より取り扱い安い構造になっている。空胴の冷却、空胴共振周波数の微調整、レーザー励起によるリドベルグ原子生成、フィールドイオン化電子検出部の最適化などを行い、十分な性能を得た。特に、フィールドイオン化部では、従来に無い方法として我々が独自に考案した電場中での非断熱遷移過程を利用する方法を開発し、準位の選択性について非常に良い性能を得ている。
2)以上のテスト実験結果に基づき、質量6μeV領域のアクシオン探索を始めたが、探索実験の過程で、クライオスタット中の液体ヘリュウム貯蔵部のステンレス製側壁に大きな歪みが生じていることが判明した。これは大気圧力と冷却の反復効果に因るものと考えられ、亀裂が進行して危険な状態(真空漏れを引き起こし、液体窒素およびヘリュウムがガス化し、内圧が急上昇する)になる前に詳しく検討することが必要と判断し、実験を中断した。歪みを詳しく調査・検討した結果、緊急の事態では無いが、長期の使用を考慮して修復し、以前よりも強度を保てるように補強することを行った。
3)この補修工事による実験の中断で、相当な探索実験の遅れが出ているが、現在再び実験を再開して探索領域を広げている。
4)空胴中での原子の空間的な広がり効果や空胴電場の分布を考慮した理論的な検討解析、実験装置の各部の詳細などについて論文を投稿した。

研究成果

• [文献書誌] M. Tada, S. Matsuki, K. Yamamoto, et al.: "CARRACK2-a new large-scale experiment to search for axions with Rydberg-atom cavity detector"Nuclear Physics. B72. 164-168 (1999)
• [文献書誌] K. Yamamoto and S. Matsuki: "Quantum analysis of the Rydberg atom cavity detector for dark matter axions"Nuclear Physics. B72. 132-136 (1999)
• [文献書誌] S. Matsuki, J. Funahashi, K. Yamamoto, et al.: "Progress in Kyoto axion search experiment"Proceedings of the International Symposium on the Identification of Dark Matter in the Universe, Buxton, UK, September 7-11, 1998. 441-446 (1999)
• [文献書誌] K. Yamamoto and S. Matsuki: "Quantum analysis of Rydberg atom cavity detector for dark matter axion search"Proceedings of the International Symposium on the Identification of Dark Matter in the Universe, Buxton, UK, September 7-11, 1998. 474-479 (1999)
• [文献書誌] Y. Kishimoto, S. Matsuki, H. Funahashi, K. Yamamoto, et al.: "The CARRACK2 axion experiment"Proceedings of the International Symposium on the Identification of Dark Matter in the Universe, Buxton, UK, September 7-11, 1998. 636-641 (1999)