主に九州地方の史料所蔵機関に赴き、琉球関係史料の調査を行うとともに、東京大学史料編纂所所蔵の島津家文書を研究し、次のような成果を得た。 島津家文書には、多くの琉球関係史料があるが、かならずしも十分には利用されてきていない。これは、琉球関係史料が一括して入っているわけではないこと、および島津家文書の公開体制が調っていなかったためである。本研究では、島津家文書中の琉球関係文書のリストを作成した。島津家文書の中で、琉球関係史料は、次の(1)から(5)の形で納められている。(1)白木箱 一番箱から十三番箱まで、および四十五番箱があり、薩摩藩記録所に残された歴代藩主の関係史料である。おおむね年代順になっており、琉球国王書状、および琉球三司官起請文が残っている。なお、四十五番箱は、琉球関係史料が集中的に納められており、その内容は琉球国王と島津藩主の往復書状である。(2)小箱六番箱 琉球国諸島高辻帳、および琉球使節参府関係史料が納められている。(3)小箱白包本 境争論や天保国絵図関係史料が納められている部分であり、その関係で、琉球国変地改目録が納められている。(4)長持四番上および九番上 白木箱と同じ性格の史料で、かつ白木箱よりも年代の古い史料が納められている。したがって、琉球関係史料も同様に納められているが、特に九番上には、宝永七年の琉球両使参府関係史料が納められている。(5)箪笥 おおむね幕末期の史料が納められており、琉球関係史料も外国との関係を示す史料が納められている。 また、東京大学史料編纂所所蔵の「琉球関係文書」全18冊のテキストデータが完成し、山本博文個人のホームページで公開した。データ量は約1MB程度である。本書には、これにしかない史料が多数納められている。
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