心の発達 : 認知発達障害

1997 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 09207102
• 研究種目: 重点領域研究
• 研究機関: 京都大学
• 研究代表者: 小嶋 祥三 京都大学, 霊長類研究所, 教授 (70027499)
• 研究分担者: 川島 隆太 東北大学, 加齢医学研究所, 助手 (90250828) ; 山本 淳一 明星大学, 人文学部, 助教授 (60202389) ; 長崎 勤 筑波大学, 心身障害学系, 助教授 (80172518) ; 辰巳 格 東京都老人総合研究所, 室長 (40073027) ; 杉下 守弘 東京大学, 医学系研究科, 教授 (10114513)
• キーワード: 認知発達障害 / 教育支援システム / 機能的脳画像 / ポジトロンCT / 機能的MRI / 老齢ザル

研究概要

発達障害児の認知、言語機能の改善にコンピュータを利用した教育支援システムを適用するための基礎的研究が行われた。その結果、知覚運動協応の形成により、マウスを使ってたコンピュータ使用が可能なこと、2.「文字による単語構成」、「単語による文構成」の成立に有効なこと、3.それらは「文字による文構成(ワープロ・スキル)」へ移行できることなどが明らかになった。ダウン症児と健常児で、「他者の意図、欲求」を尋ねる発話行為の形成、獲得を検討した。
機能的脳画像研究では、1.機能的MRIにより言語優位半球を決定するための「しりとり」課題の有効性が確認され、小児失語症の回復が左半球の代償であることを示唆した。2.固有名詞想起の老化を脳活動から検討するために、若年健常者に語想起課題を課し、PETによる賦活部位の検討を行った。その結果左右いずれかの側頭葉前部が賦活されることが分かった。3.自己認知に関与する脳内のネットワークをPETにより検討した。自己の顔写真に注意を向けたときと、他者の顔情報処理時の血流量を比較した。その結果、左島皮質、前頭前野、右帯状回が自己の顔処理に関連することが明らかになり、、自己意識との関連が考察された。4.麻酔下のサルにKanizsaの図形を提示すると、第1次視覚野は応答せず、第2次視覚野のみが応答する。しかし健常者を被験者とした機能的MRIによる研究では、詳細な分析を必要とする事態では、第1次視覚野も関与することが明らかになった。5.健常者の表情の情動判断、好悪判断と脳の関係をPETにより検討した。その結果、前者では右の前頭葉、後者では左の前頭葉が関与することが明らかになった。
老齢ニホンザルの認知機能の低下を、前頭葉腹側部の機能に関連した連続逆転、Go/NoGo弁別、学習セット形成により検討した。内側眼窩前頭部の機能低下が推測された。

研究成果

• [文献書誌] Fushimi,T.: "Consistency,frequency,and lexicality effects in naming Japanese Kanji." J.Exp.Psychol.,Human Percept.Perform.(in press). (1998)
• [文献書誌] Patterson,K.: "Fragmented words : A case of late-stage progressive aphasia." Neurocase. (in press). (1998)
• [文献書誌] Inoue,K.: "Activity in the parietal area during visuomotor learning with optical rotation." NeuroReport. 8. 3979-3983 (1997)
• [文献書誌] Inoue,K.: "PET study of pointing with visual feedback of moving hand." J.Neurophysiol.79. 117-125 (1998)
• [文献書誌] Hashiya,K.: "Auditory-visual intermodal matching by a chimpanzee." Jap.Psychol.Research. 39. 182-190 (1997)
• [文献書誌] Nakamura,K.: "Neuroanatomical correlates of judgment of facial attractiveness." NeuroReport. (in press). (1998)
• [文献書誌] 山本 淳一: "応用行動分析学入門" 学宛社, 278 (1997)
• [文献書誌] 杉下 守弘: "失語症からみたことばの神経科学III-2functionalMRIと言語機能" メジカルビュー社, 188 (1997)