研究課題/領域番号 |
09207105
|
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
波多野 誼余夫 慶應義塾大学, 文学部, 教授 (60049575)
|
研究分担者 |
高橋 恵子 聖心女子大学, 文学部, 教授 (40050786)
鈴木 宏昭 青山学院大学, 文学部, 助教授 (50192620)
稲垣 佳世子 千葉大学, 教育学部, 教授 (90090290)
渡辺 茂 慶應義塾大学, 文学部, 教授 (30051907)
子安 増生 京都大学, 大学院・教育学研究科, 教授 (70115658)
|
キーワード | 素朴理論 / 素朴生物学 / 素朴物理学 / 素朴心理学 / 概念変化 / 比較認知 / 枠組理論 |
研究概要 |
幼児の素朴理論の獲得と改定を扱うサブグループ(稲垣、鈴木、高橋、子安、波多野)では、分野(素朴生物学、物理学、社会学、心理学)ごとの枠組理論の暫定的な定式化、それにもとづく課題の構成・選定、年齢の異なる幼児への課題の実施と反応の分析を行った。本年度はとくに、素朴物理学、素朴心理学に関して大きな前進があった。ヒトにおいて重力の直観(物は真下に落下する)がきわめて強いために、2、3才に到ってもチューブ課題などに正反応しえないこと、さらにずっと後の年令でも移動中の物体(例えば飛行機)からの落下の奇跡を誤って判断すること、反面このために支えの必要性の理解は早く成立することなど、乳幼児期の素朴物理学をつなぐ知見が得られた。また、幼児にはすでに二つの心的状態(欲求と意図)を区別しうろことも明らかにされた。年長の幼児では、かなりの割合の者が身体現象に対して生気論的な因果的説明を自発的に構成でき、摂食により取り入れた力が病気への感染を防いだり、寿命をのばしたり、けがさえも直すことがあると考えていること、生物と複雑な人工物(自動的に作用するようにみえる人工物)をその内部過程が異なるという観点で区別し得ることなども明らかになった。 比較認知のサブグループ(渡辺、友永、岡ノ谷、板倉、波多野)では、従来の方法により研究を進めるとともに、ヒトの乳幼児に対して用いられる刺激のうちどれが訓練に適しているか、乳幼児と比較可能な課題やその実施手続きとしてどんなものが考えられるか、さらに素朴理論の要素でヒト以外の動物の概念形成になじみそうなものはあるか、などを検討した。しかしこうした努力にもかかわらず、動物の概念研究から年長幼児の概念発達に対して直接示唆をうることが困難であることが明らかになった。
|