研究概要 |
本研究は、考古学と分子遺伝学の密接な連携のもと、縄文と弥生の両時代の遺跡から出土する動物遺存体の中で形態的特徴が大きく変化する家畜(犬とイノシシ・ブタ)に着目し、動物遺存体に残存する遺伝子を分離・増幅して各家畜の遺伝的背景を明らかにし、家畜の渡来と日本在来家畜の形成過程を明らかにすることを目的とした。平成9年度は、現生犬のミトコンドリアDNAのDループ領域のデータベースの構築と、縄文と弥生時代の遺跡より出土した古代犬の残存遺伝子の増幅を行い、以下の結果を得た。 1)現生犬のミトコンドリアDNA(mtDNA)データベースの構築:現生犬(日本犬123頭、西洋犬57頭)計180頭よりmtDNA・Dループ領域(198bp)を解析し、28型のハプロタイプを検出した。 2)古代犬のハプロタイプの解析:縄文時代の遺跡(20ヶ所)、弥生時代の遺跡(2ヶ所)、古墳時代の遺跡(1ヶ所)、オホーツク文化期の遺跡(6ヶ所)、鎌倉時代の遺跡(1ヶ所)の30ヶ所の遺跡より出土した古代犬の骨から残存遺伝子を分離し、PCRによりmtDNAのDループ(198bp)のDNAを増幅後、その塩基配列を決定した。その結果、検索した145サンプルの内74サンプルから残存遺伝子を分離し、DNAの塩基配列を決定することができた。古代犬のハプロタイプは、現生犬に検出された5種類(M1,M2,M5,M10,M11)と現生犬に検出されなかったハプロタイプ14種類が得られた。特にM5型は関東以北の遺跡に多く分布したのに比べ、M2型は東北地方から西に広く分布していることが明らかとなった。
|