研究概要 |
稲田孝司は高知県愛宕洞窟と貝ノ川洞窟を発掘し,遊動生活と定住集落との関係を考えた。小野昭は,新潟県真人原遺跡A地点を発掘し,小形尖頭器の時期のキャンプ地の利用と更新世末の環境適応を追究し,また,旧石器時代の骨器を世界規模で集成し,考察した。木村英明は,北海道白滝幌加沢遺跡の石器の分析をつづけ,シベリアと韓国の旧石器の集成,東北アジアの石刃鏃の集成をおこなった。佐川正敏は,中国旧石器時代前・中期のハンドアックスについて考察し,また,旧石器から新石器への移行期の中国と日本の縄文文化とを比較した。甲元眞之は,長崎県福江島の中島遺跡を発掘し,縄文前・後期の生業活動を復元し,さらに,東北アジア先史時代の石製装身具,朝鮮海峡周辺の漁労具を集成した。宮本一夫と中橋孝博は,佐賀県大友遺跡で弥生時代早・前期の支石墓を発掘し,その変遷を明らかにし,弥生早期の人骨が低顔・低身の縄文系の特徴をもち,抜歯の型式も縄文系であることも確認した。藤尾慎一郎は,弥生文化成立期の粕屋平野と大阪平野の水稲農耕の受容過程を考察し,さらに,西日本および韓国の土器の集成をおこなった。春成秀樹は,弥生時代の土器と木製品に描いた絵画を集成し,また,中国新石器文化起源の龍が日本列島に伝来したあと,その性格がさまざまに変化したことを明らかにした。さらに,大分県聖嶽洞窟の旧石器時代の石器と人骨を検証した。研究協力者の小田静夫は旧石器時代の磨製石斧の集成をおこなった。研究協力者の安里進は,波照間島の大泊浜貝塚の発掘報告をまとめた。中村慎一は,東アジアの囲壁・環壕集落に関する資料集成をおこない,国家形成と都市化を研究した。福永伸哉は,弥生終末期の墳丘墓を分析し,最古の前方後円墳の箸墓古墳との間に大きな飛躍を認めた。和田晴吾は,京都府最古の五塚原古墳を調査し,前方後円墳の出現と展開の歴史的評価を試みた。
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