研究課題/領域番号 |
09212202
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
中山 恒義 北海道大学, 大学院工学研究科, 教授 (80002236)
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研究分担者 |
寺尾 貴道 北海道大学, 大学院工学研究科, 助手 (40271647)
矢久保 考介 北海道大学, 大学院工学研究科, 助教授 (40200480)
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キーワード | ガラス / 複雑系 / 強局在 / コンピュータ物理学 / 強制振動子法 / DLCA / エアロゲル / スケーリング |
研究概要 |
ガラスは、約10K以下でのTに比例する比熱、10K領域での熱伝導率のプラトー、そしてラマン散乱における50cm^<-1>前後での幅の広いピークいわゆるボゾン・ピークの存在などミクロな構造によらない普遍的な諸性質を示すことでよく知られている。Tに比例する比熱に関しては、原子集団のトンネリング・モデルに基づく広いエネルギー分布を有する二準位系の存在の「仮定」により説明される。また熱伝導率の10K近くでのプラトーに関しては、何らかの原因で音響フォノンが強く局在していることが関与していると考えられている。しかしながら、強い局在状態が導かれる構造的な意味での起源は明らかにされていなかった。これが明らかになればガラスの動的性質、すなわち極低温から高温または低エネルギーから高エネルギー領域までの、普遍的かつ特異なガラスの性質の解明につながるものと考えられている。最近、a-SiO_2に対して高分解能非弾性X散乱実権(SOR)が、グルノ-ブルで相次いで行われた。すなわちコヒーレント非弾性中性子散乱実権ではカバーできない低エネルギー領域でのS(q.ω)の知見が得られるようになった。これによると一つはボゾン・ピークを観測し、もう一つの実験では分散性すなわちq依存性を持つ音響モードの存在が示唆されている。本年度の研究では、ガラスの本質的な構造だけを取り入れた単純化されたモデルで、ガラスに関する普遍的な動的諸性質がよく説明されることを示した。 また本年度の研究では、水に対する簡単化された構造モデルを用いて、動的構造因子S(q.ω)を計算し、上記の非弾性X線散乱実験で得られたS(q,ω)の振る舞いと比較することにより、その物理的起源を明らかにした。これらの結果を踏まえラマン散乱分光に現れる幅の広い60cm^<-1>と180cm^<-1>のピークは、質的に異なった局在モードが関与していることを明らかにした。
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