これまでコマチアイト中の希ガスを全岩で測定してきたが、やはり全岩では同化、変成の影響をぬぐえない。そのため、本研究では西オーストリアのピルバラクラトンからのコマチアイトについて、鉱物分離を試みた。鉱物の種類により大きさが異なることを薄片で観測できたことから、岩石を粉砕しサイズ分けしたところ、各フラクションにより鉱物が分離されていることがわかった。この方法により鉱物分離を行った。 一方、質量分析計についている溶解炉のラインを改良し、岩石の粉砕によりでてくるガスを分析するため、質量分析計のラインを改良し、新しい粉砕器をつけた。従来の方法ではソレノイドコイルにより外側からピストンを上下させて試料を粉砕する方法であったが、新しくエア-バルブを用いた装置を試作した。しかし、最初に製作したものはパワーが足りず、充分な粉砕には至らなかった。現在この装置を改良した2号機の完成を待っている段階である。 しかし、予備的な実験として、一番大きなサイズフラクションについて粉砕法による測定を試みた。重い希ガスは測定に充分な量がでなかったが、Heについては最初の200回のピストン上下による粉砕による測定では^4He量が1.11x10-^7cm^3STP/g、^3He/^4He比は9.25x10-^8であった。さらに50回の追加粉砕測定では^4He量が5.35x10-^8cm^3STP/g、^3He/^4He比は3.70x-10^7であった。合計では^4He量が1.65x10-^7cm^3STP/g、^3He/^4He比は1.83x10-^7になる。このHe比は典型的な地殻物質よりは高い値であるが、大気よりは低い値である。NeやArの測定結果がないので、現段階では詳しい議論はできない。現在、新しい粉砕機の完成を待つと同時に新鮮な試量の鉱物分離を行っている段階にある。
|