ジンバブエクラトンの成因に関する研究は、現在までグリーンストン帯を中心に行われてきた。しかしながらクラトン全体の8割を越える花崗岩類に関しては詳細な岩石学的研究は未だ成されていないのが現状である。そこで本研究は、ジンバブエクラトンの古期花崗岩質片麻岩(OG)および新期花崗岩(YG)の野外調査を行い、得られた岩石の記載岩石学的研究、岩石・鉱物の化学組成から、ジンバブエクラトンの形成過程を考察した。 本年度に実施したジンバブエ調査により、クラトン南部を中心にほぼ全域から約150地点、250個以上の花崗岩類を採集した。これら岩石の露頭での記載、薄片観察データをもとに全サンプルの産地、岩相、鉱物組み合わせ、変質度などについてデータベースを作成した。OGは一般的にミグマタイト的であり、特にTokwe地域では複数の変形イベントが確認できた。なおOGに含まれているジルコンの大部分は融食・再成長の証拠を示し、花崗岩の形成後に熱イベントを受け、現在のようなミグマタイトが形成さたことが明らかである。一方、YGは露頭では塊状で部分的に斑状カリ長石を含む。その中に含まれるジルコンはOGのものと似ているものも多いが、一般に斑状花崗岩中のものはOG中のジルコンとは全く異なり、コアからリムまで単調な累帯構造を示す自形のジルコンが多い。OGおよびYGの接触部は明瞭な貫入関係にあり、貫入を受けたOG中のジルコンは最高3ステージの融食・再成長組織を示す。これは貫入によるOGの小規模の部分溶融とジルコンの再成長が考えられる。 全岩組成については現在分析中であるが、同じ岩体でも組成多様性が大きいが、一般的に時代が若いほど岩石はカリに富む傾向にある。ジルコンの形態および主要化学組成から考察すると、多くのYGはOGの部分溶融によって形成された可能性が高い。今後の微量組成分析によってOGおよびYGの関係が明らかになりつつあるであろう。
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