これまでの研究では、Biを含み結晶構造の対称性の高いBaPb_1-xBixO_3は低温作動型の酸素イオン導電体として有望と提案してきた。しかしながら本物質の応用ならびに基礎物性の精密な定量的測定には高密度の焼結体作製プロセスの開発が必要であることも明らかになった。 本研究では高密度焼結体作製方法としてBaまたは酸素欠損導入によるイオン拡散促進による粒径の増大が可能か否かについて検討した。Baまたは酸素欠損を検討したのは、本物質中ではBaとOが立方最密充填構造をとるためである。 まずBaをdeficientにして試料を作製した場合、Baの不足量が多くなるほど焼結密度は向上することが判った。しかしながらBa不足量を多くしても試料の格子定数、結晶構造は変化しなかった。SEM-EPMAでBa不足量の多い試料を観察したところ、粒径に顕著な増大は見られず、粒界にBiを主成分とする第2相が観測された。Ba欠損は試料に入らず。結果的に過剰になったBiが第2相を構成し粒界を充填したため、一見密度が向上したと解釈できる。 次に酸素欠損の導入のために酸素分圧の低い雰囲気で焼結を行った。焼結時の酸素分圧が低いほど焼結密度は向上することが判った。またSEMで試料の破断面を観測したところ、低い酸素分圧での焼結により粒径が1桁向上していることが判った。酸素欠損導入により、イオンの拡散が促進され、粒径の増大、並びに焼結密度の向上が起こったと解釈できる。酸素欠損を導入した試料を酸素気流中でアニールすると電気伝導はアニール前よりも4桁近く上昇した。
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