研究概要 |
主鎖がオキシエチレン単位からなり、かつ側鎖にトリ(オキシチエチレン)セグメントを有する高分子量櫛形高分子(TEC)の固体電解質としての性質と構造について検討した。TECは重量平均分子量が10^6オーダーの高分子量体であり、側鎖含量が5mo1%(TEC-5)、11mo1%(TEC-11)、18mo1%(TEC-18)である。TECに過塩素酸リチウムをド-ブすると、導電率は側鎖含量が大きくなるほど上昇し、側鎖含量による導電率の違いは低温ほど著しいことが判った。TEC-11とTEC-18に関して導電率の塩濃度依存性を各温度に対してプロットしたところ〔Li〕/〔O〕=0.10あたりに極大が存在した。30℃で10^<-4>S/cmオーダー、80℃で10^<-3>S/cmオーダーの導電率を示す良好な高分子固体電解質であった。導電率の温度依存性をArrhenius式やWLF式、VTF式を用いて検討したところ、イオン移動機構が拡散のみならずポリマーのセグメント運動に影響されていることが判った。示差走査型熱量分析、広角X線回折(WAXD)、動的粘弾性測定よりトリ(オキシエチレン)セグメントの導入は主鎖の結晶性を低下させ、高イオン伝導性発現に大きく寄与していることが判った。結晶化度はTEC-0、TEC-5,TEC-11,TEC-18でそれぞれ83%,31%,23%、12%であった。塩をドープするとさらにアモルファス性は大きくなり、導電率向上に寄与した。〔Li〕/〔O〕-0.15のTEC-18-15では、WAXDプロフィルの低角度側のピークにショルダーが認められ、結晶構造とは異なる何らかの高次構造が形成していることが判った。高塩濃度で導電率が低下したのは、Tgの上昇とこの高次構造が影響している可能性がある。TECは非常に高分子であるため架橋無しに柔軟なフイルムに成形でき、固体電解質として有望な材料である。
|