研究概要 |
Sc_2(WO_4)_3-Lu_2(WO_4)_3系は種々のScとLuとの割合において固溶体を生成する。この2元型固溶体にさらにAl_2(WO_4)_3を加えた三元系固溶体の中でSc,Lu比が1:1、Sc_2(WO_4)_3-Lu_2(WO_4)_3系に対しAl_2(WO_4)_3を10mol%含む固溶体において導電率が最大値を持つことがわかった。これは(Sc,Lu)_2(WO_4)_3固溶体中をAl^<3+>イオンが伝導するために最適な格子サイズ及びAl^<3+>イオン濃度が存在することを示している。又、最大導電率を示す0.1Al_2(WO_4)_3-0.9(Sc_<0.5>Lu_<0.5>)_2(WO_4)_3の誘電率は600℃においてAl_2(WO_4)_3単独と比較して約24倍に増大した。0.1Al_2(WO_4)_3-0.9(Sc_<0.5>Lu_<0.5>)_2(WO_4)_3は1〜10-^<25>atmの広い酸素分圧範囲において交流導電率は一定となった。電子伝導体の場合は交流導電率が酸素分圧に対し影響を受けるのに対して、全く影響を受けていないことからイオン伝導が支配的であることがわかった。次に酸化物イオン伝導の可能性の有無を調べるために酸素、窒素、ヘリウム雰囲気中で0.1μAの直流電流を通電し、分極挙動を評価した。その結果、いずれの雰囲気中においても通電後すぐにσ_<DC>/σ_<AC>は大きく減少した後一定になった。典型的な酸化物イオン伝導体であるHfO_2(20mol%CaO添加)の分極特性と比較したとき、HfO_2がO_2雰囲気下においては分極しないことから0.1Al_2(WO_4)_3-0.9(Sc_<0.5>Lu_<0.5>)_2(WO_4)_3の可動イオン種は酸化物イオンでないことがわかった。このことより、伝導種はイオンであり、かつ、酸化物イオンでないことから、0.1Al_2(WO_4)_3-0.9(Sc_<0.5>Lu_<0.5>)_2(WO_4)_3はカチオン伝導体であることがわかった。そこで、次に伝導イオン種を決定するために直流電圧を印加し、試料カソード表面のSEM観察及びEPMAを行った。EPMAはカソード表面のほか、試料ペレットの断面の線分析も行った。電解後、カソード表面に粒状の析出物が認められ、この析出物はEPMA分析からAlのみを含んでおり、Al_2O_3であることがわかった。このことは、固体中をAl^<3+>イオンが移動し、カソード表面でAl金属として析出した後、酸化されたことを示している。また、断面の線分析の結果、Sc、Lu、Wのカソード側での偏在が認められなかったのに対し、Alには認められたことから、0.1Al_2(WO_4)_3-0.9(Sc_<0.5>Lu_<0.5>)_2(WO_4)_3がAl^<3+>イオン伝導体であることが明かとなった。
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