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本研究では、統計的な反応論、特に遷移状態論を多自由度力学系の立場から再検討する研究を行ってきた。その中で、3自由度以上の系に見られる現象としてcrisisを、具体的な3体系ファンデルワールスクラスターにおいて調べてきた。今年度は、この現象を化学反応論・力学系理論の両面で、より一般な立場から研究するため、crisisの本質を取り出したモデルハミルトニアンを研究し、crisisの発生条件を解析的に得ることができた。この解折の過程で、3自由度以上の系において、非線形共鳴の成す編みの目(Arnold's web)が重要であることが明らかになった、これまで研究してきたcrisisは、この編みの目において特徴的な分岐現象の一つである。
このcrisisを含め、多自由度系の相空間の構造をより一般に研究する方法を研究するとともに、多原子分子における緩和過程や少数多体系における相転移を、これら相空間の構造から解折しはじめている。特に、ア-ノルドの編みの目を具体的な分子で調べるため、アセチレンの分子内エネルギー緩和の解折を始めている。この成果については、近い内に公表できる、また、非線形共鳴の編みの目と、確率共鳴(stochastic resonance)との間に密接な関連があることに気がついた。確率共鳴は、筋肉の収縮におけるエネルギー変換のモデルの一つである。この方向から、化学エネルギーの変換について、力学系の立場から研究することができるのではないかと予想している。
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