昨年度までの研究において、磁性細菌粒子及び抗癌剤cis-dichlorodiammine platinum(CDDP)を封入したリポソームを用いて、in vitroでの抗腫瘍作用およびin vivoでの外部磁場による薬剤の誘導・固定を確認し、人工の磁気微粒子に対する磁性細菌粒子の優位性を示してきた。さらに、より高度にキャラクタライズされた磁気超微粒子-リポソーム複合体として、磁性細菌由来の磁気微粒子の生成に関与するタンパク質MagAを発現させた大腸菌の逆転膜リポソーム内でのマグネタイト生成に関する研究について進めているが、その発現量が低いことが問題となってしいる。そこで本年度は、磁性細菌粒子上のタンパク質から、発現量が高いタンパク質を検索し、そのタンパク遺伝子を分離、解析した後に融合タンパクとしての利用の可能性について検討した。磁気微粒子の膜タンパクは、磁気微粒子より8M尿素溶液により変性させて抽出した。細胞膜についても同様の条件でサンプルを調整し、二次元電気泳動後、ゲルからタンパクをPVDF膜に転写し、クマシ-ブリリアントブルーにより染色した。磁性細菌の細胞膜及び磁気微粒子膜を二次元電気泳動を行った結果、細胞膜と磁気微粒子膜ではそのタンパク構成が非常に異なっており、また、磁気微粒子膜上に特徴的なタンパクを3スポット(Spot 1-3)確認することができた。磁気微粒子膜表面に特徴的な3スポットのタイパクについて、エドマン分解法によりN-末端アミノ酸シークエンスを行い、それぞれのタンパクのN-末端アミノ酸シークエンスを決定した。これらのシークエンスのうちの一つは磁性細菌MS-1株で報告がある磁気微粒子から分離されたタンパクと83%のホモロジーがあった。また、得られたN-末端アミノ酸シークエンスよりデザインしたプライマーによりPCRを行った結果、105bpの断片(mps-PCR1)が磁性細菌のゲノムから増幅された。
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