研究概要 |
三段階成長法によるPDA薄膜の形成:前年度までに得られた実験結果を検討した結果、PDA薄膜形成は三段階の過程に整理できることを明らかにした。具体的には、第一段階が、(1)半導体基板上へのPDA結晶核形成過程、次の第二段階が、(2)核の面内での発達により達成される1層目(テンプレート層)の形成、すなわちテンプレート形成過程、そして第三段階が、(3)テンプレート層の配向に沿って2層目以降が形成されるエピタキシャル成長過程である。そこで本年度は、各段階での成長条件を厳密に制御し、PDA薄膜の三段階形成法によるPDA結晶薄膜の作製に絞り実験を行なった。まず、GaAs(100)基板上に表面平坦なGaAsバッファー層を形成後、低密度PDA核形成(第一段階)を基板温度T_S110℃で行なう。この間、GaAsバッファー層のRHEEDパターンは明瞭に観察される。次に、T_S95℃に下げて二次元的な成長モードが支配的となる条件(T_S>90℃,成長速度R<0.05Å/sec)において、テンプレート層を形成する。この場合、テンプレート層により基板表面がほぼ完全に覆われた時点でGaAsバッファー層のRHEEDパターンは消滅する。最後に、T_S=85℃において、比較的速い堆積速度でテンプレート層上にPDAエピタキシャル成長を行なう。成長中には、PDAに特有なストリーク像がRHEEDで観測される。得られたPDA薄膜が表面が極めて平坦で、100μm四方程度の比較的大きな単結晶ドメイン多数から成っており、三段階形成法が良質なPDA薄膜を得る上で大きな効果を発揮することがわかった。X線回折の結果、PDA(100)面がGaAs(100)面に対して平行となっていることも明らかとなった。また、単一ドメインのラマン散乱分光測定により、単一ドメインが一軸配向性のPDA単結晶より出来ていることも明らかとなった。この成果は、高分子薄膜における量子光・電子物性を研究するための高品質材料作製法を提供するものであると認識している。
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