本研究は、距離と配向を制御したポルフィリン色素誘導体の選択的な電子伝達をタンパク質および脂質/ポルフィリン色素誘導体系で作成し、生体エネルギー変換膜系で行われている効率の良いポルフィリン誘導体の電子伝達システムを人工的に構築することを目的とした。本年度は、アンテナ色素複合体と類似したタンパク質および脂質と結合したポルフィリン誘導体を脂質二分子膜中に導入し、ポルフィリン誘導体の膜中での電子伝達挙動について検討を行った。はじめに、諸種のタンパク質と結合したポルフィリン誘導体ならびに脂質と結合したポルフィリン誘導体の合成し、それらの脂質二分子膜中への再構成を行った。タンパク質として、紅色光合成細菌の光収穫系の膜貫通タンパク質と類似したコアタンパク質(30残基)を新たに合成して使用した。諸種のポルフィリン誘導体の電子伝達は膜を介する電子移動速度から調べた。膜を介する電子伝達系として、還元剤(OUT)/膜、合成したポルフィリン誘導体/酸化剤(IN)系ならびに脂質膜で被覆した電極系を用いた。諸種のポルフィリン誘導体の脂質二分子膜中でのコンビナ-トな電子伝達を速度論的に取り扱った結果、電子伝達におよぼすポルフィリン-ポルフィリン間の距離と配向ならびにタンパク質中でのヒスチジン残基の影響が大きいことが認められた。また、ポルフィリン誘導体の構造ならびにその配位金属の違いがその電子伝達に大きな影響をおよぼすことも認められた。
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