配向したヘリックスペプチド超薄膜を調製するため、両末端をフリーにした16量体ペプチド、H-(Ala-Aib)_8-OH、を合成し、11-ウンデカン酸チオールの自己集合化単分子膜 (SAM)とインキュベーションした。得られた金基板上のヘリックスペプチド薄膜のFTIR-RAS測定から、ヘリックスペプチドがヘリックス軸をほぼ法線方向(傾き角4°)に配向させて集合体を形成していることがわかった。基板上のカルボキシラートと16量体ペプチドのアンモニウム基との間、およびポリペプチド層間でのアンモニウム基とカルボキシラートに基づく静電相互作用が良好に働き、高度に配向した薄膜が得られたと考えられる。さらに、金基板上に共有結合で固定化されたポリぺプチド薄膜を得るため、リポ酸をN末端に結合した16量体ヘリックスペプチド、Lipo-(Ala-Aib)_8-OBzl、を合成し、金基板とイクキュベーションしてSAMを得た。このペプチド薄膜のFTIR-RAS測定を行ったところ、ヘリックスペプチドがヘリックス軸を法線方向から約33°傾けて単分子膜を形成していることがわかった。このポリペプチドSAMは、パラレル型配向の単分子膜であり、単分子膜中でダイポールモーメントがパラレル型で配向していることから、焦電性や圧電性など様々な非線形効果を示すと考えられる。また、反転中心対称がない構造の場合、非線形光学効果を示す有機薄膜となる。そこで、電荷移動型のクロモホアをヘリックスポリペプチド分子の両末端に導入したペプチドの合成も行った。大きな非線形光学効果が期待される。
|