これまでに、反応機構におけるZnの役割は、フォーメート中間体からメトキシ中間体までの素過程の促進であることが示唆されていた。そこで、Cu(111)とZn/Cu(111)表面で、CO_2とH_2からのメトキシの生成過程をin-situ IRASを用いて調べた。その結果、Cu(111)表面ではフォーメートのみが検出されるが、Zu/Cu(111)ではフォーメートの生成後にメトキシが生成した。この結果は、Znがフォーメートからメトキシまでの過程を促進することを示している。このように、メタノール合成反応にみられるZnの促進効果は、律速過程であるメトキシ生成におけるZnの触媒作用であることがわかった。次に、Cu(111)でのフォーメートの分解・生成のキネティクスをXPSを用いて測定し、粉体Cu/SiO_2触媒のFT-IRによる結果と比較した。フォーメート生成に関しては、速度をTOFで表したア-レニウスプロットにおいて、モデル触媒と粉体触媒の間に差異は見られなかった。また、Cu(111)でのフォーメートの定温分解実験により、速度定数を測定し速度論的解析を行った。この実験データ及び既知のデータを基に、ポテンシャルエネルギーダイアグラムを作成し、メカニズムを定量的に表現した。モデル触媒と粉体触媒では、トータルの活性と共に素過程のキネティクスもよく一致することが明らかとなった。最後に、Zn/Cu(111)表面に合成したフォーメートの吸着構造をSTMで調べた。その結果、Cu(111)清浄表面で観察されたフォーメートの周期構造とは異なるSTM像が得られた。フォーメート分子一つ一つが像として映し出されるが、トンネル電流値に対応する明るさが不均一であり、所々に明るく写るフォーメート分子が観られる。現在、このフォーメート分子が活性点であるZnに結合しているものと考えている。
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