得られたZSM-5膜を用いて、ブタン異性体のガス透過実験を行った。単独系のn-ブタンの透過流束は300〜400Kの温度範囲で温度の上昇とともに増加した。i-ブタンはこの温度範囲で検出限界以下(Flux<1x10^<-7>mol m^<-2>s^<-1>)であり、ブタン異性体の透過係数の比は400Kで200となった。混合ガス透過実験では、n-ブタンの透過流束は単独系と同様、温度の上昇とともに増加し、325〜400Kで単独系のそれとほぼ等しい値であった。また、n-ブタンはi-ブタン共存下でも、細孔内に十分に取り込まれていることがわかった。一方、i-ブタンは、単独系では検出されなかったものの、混合系では350〜400Kで検出され、温度の上昇とともにn-ブタント同様に透過流束は増加した。 混合系での分離係数は、350〜400Kの温度範囲でおよそ20であった。混合系で分離係数が減少した理由は、n-ブタン分子の透過により、細孔内に入ったi-ブタン分子が押し出されたものと推測している。これより、細孔内での分子の透過挙動は、それぞれの分子のすれ違いが起こらないSingle-file Diffusionが関与しているものと考えられる。選択性発現の原因は、供給側の細孔への取り込み速度の違いによると思われる。
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