熱力学的に安定な、地球温暖化物資である二酸化炭素の有効利用(再資源化)を目的に、交流無声放電を用いたプラズマ触媒反応器を試作し、その可能性を追求し、性能の評価を行った。 室温、大気圧下、流通系反応装置により、(1)二酸化炭素の直接分解、(2)メタン単独の改質および(3)二酸化炭素とメタンとの反応について検討した。また、CCDカメラを用い、プラズマ領域における励起種を測定し、プラズマ触媒反応機構の解析を行った。 本反応器は、上記の3反応において、通常の熱-触媒反応を凌駕する性能を示した。反応(1)においては、二酸化炭素は効率的に一酸化炭素と酸素に分解し、炭素の生成は認められなかった。反応(2)においては、酸化剤不存下で、メタンは選択的にC2炭化水素を生成し、さらなる検討が望まれる。反応(3)において、メタン/二酸化炭素比が1の場合選択的に水素と一酸化炭素を生成するが、この比が増加するとC2炭化水素の生成が、減少すると一酸化炭素の生成が増大した。 さらに、発光スペクトルおよび動力学的解析の結果、プラズマ領域で励起された反応分子が触媒電極表面上で生成物に変換される、プラズマ=触媒反応機構が示唆された。これらの成果は数報の論文に纏められ、現在、学術誌に投稿中である。 結論として、本プラズマ触媒反応の研究は、その緒についた段階であるが、プラズマ励起による反応速度の増大と、触媒作用による反応選択性の向上という相乗効果を期待できるものと考える。今後は、二酸化炭素に限らず、種々の大気汚染物質の除去等、通常の熱-触媒系では難しい、安定物資の反応におけるプラズマ触媒反応の可能性を追及したい。
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