触媒として使用したのは、昨年度と同一のヒ素あるいはリン化合物を加えて調製したハイシリカメタロシリケートに白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウムを担持したものである。反応は、これらの触媒を固定層反応器に充填し、常圧でメタノールで希釈したシクロヘキサノンオキシムを二酸化炭素でさらに希釈して供給した。この反応率とε-カプロラクタム選択率と接触時間の関係か速度定数を算出した。速度定数は活性劣化があるため、プロセス時間とともに減少する傾向を示した。この減少曲線から触媒の活性が初期のそれの1/2になる時間を半減期と定めて、この大きさで活性劣化を表した。その結果、メタノールと二酸化炭素を希釈溶媒及び希釈ガスとして用いる系では、半減期は1200時間程度であったが、希釈ガスとして微量の酸素を使用すると、反応初期のε-カプロラクタム選択率は減少するが、反応開始後5時間で95%程度の値となり、それ以後は一定値を示した。この条件下での半減期は2000時間に達し、ほぼ実用化の域に到達したと考えている。希釈ガスを酸素にすることによる活性劣化の抑制は、酸素が触媒上に生成するコ-ク前駆体と反応して、除去されるためと考えられた。また、触媒に貴金属を担持すると、コ-クの酸化速度を増加させるため、触媒寿命が長くなったものと推定された。また、添加する貴金属によって差が見られ、プロピレンの完全酸化活性の大きな貴金属、すなわち白金とパラジウムを担持した触媒が最も半減期が長くなった。これを実際に確かめる目的で、150時間の反応を行い、予測が正しいことを証明した。
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