研究課題/領域番号 |
09220101
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
今泉 敏 東京大学, 大学院・医学系研究科, 助教授 (80122018)
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研究分担者 |
世木 秀明 千葉工業大学, 情報工学科, 助教授 (60226636)
林 安紀子 東京学芸大学, 教育学部, 助教授 (70238096)
伊藤 秀美 東北大学, 歯学部, 講師 (50005104)
志村 洋子 埼玉大学, 教育学部, 教授 (60134326)
桐谷 滋 東京大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (90010032)
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キーワード | 人工現実 / 脳機能 / 言語学習 / 視聴覚情報統合 / 音韻概念 / 脳磁図 / 聴覚野 / 第二言語 |
研究概要 |
視聴覚情報を自在に提供できる人工現実技術を学習・訓練に活用する方法を研究した。視聴覚情報を活用して第2言語の音韻概念形成訓練を行い、訓練前後の脳機能の変化を脳磁図を用いて解析した。13名の英語話者に英語のr、lを含む90単語(right vs.lightなど)とs、T(thin vs.sinなど)を含む単語を発話してもらい、音声と顔面画像をVTRに記録した。この視聴覚信号をコンピュータ制御のレーザーディスクに格納し、訓練システムを作成した。訓練には6名の話者の発話を用い、特定の話者に対してランダムに1個の単語を視聴覚、あるいは聴覚提示してrを含む単語かlを含む単語かを答える方式で行った。正答と正答率を示し、成績向上を促した。訓練の前後に訓練の効果を確認するための諸検査を行った。検査には訓練に使用しない話者の発話データを含めて、r,l単語群とs、T単語群の弁別課題(正答提示無し)、単音節を使用した多次元尺度構成法による音韻概念の心的構造の解析、手がかりとなる音響情報を種々に制御した合成音声や、分析合成音声と視覚情報を併用した視聴覚刺激を用いた脳磁図の測定を行った。その結果、1)殆どの被験者で訓練前の聴覚呈示ではrとlは区別できないものの、視聴覚呈示ではある程度可能であること、2)それを反映して脳磁図上でも視聴覚呈示においてr、l弁別を反映する活動が観測されること、3)従って視聴覚刺激が音韻概念形成上有利な情報を提供すること、4)さらに訓練後、聴覚呈示だけでもrとlが区別できるようになり、5)少なくとも弁別の手がかりが十分にある場合には脳磁図上に音韻弁別を反映する活動が左側頭葉に出現すること、6)従って側頭葉に音韻概念が形成されたことが示唆された。これらの結果は視聴覚情報を自在に提供できる人工現実技術の言語訓練への有効性を示唆する。
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