本研究では、各種慢性疾患患者および身体障害者のトータルな人間としての復権を目標とし、仮想実現環境を用いたネットワーク化医療支援システムの開発を目的とした。 今年度の研究においては、情報通信ネットワーク上における仮想環境の実装の研究に重点をおき、われわれの提案するハイパーホスピタルを実現するためのネットワーク技術として、衛星回線経由のインターネットプロトコルによるマルチメディア通信システムの使用を検討した。このための予備実験として、様々な形式の仮想空間を構成するデータへのアクセス時間などを実測した。 この結果、衛星回線と地上回線の比較では、衛星回線の方が、地上回線よりもはるかに高速に応答し、従って、大量のマルチメディア情報を伝送するハイパーホスピタルの実現という目的から見て衛星回線が優れており、特に、地域分散されている患者家庭に均等の情報を送るのには適していることが見い出された。各地上局に設置した受信システムのパーソナルコンピュータの種類に性能が多少依存したが、その差は殆どなかった。このシステムは、多数の特定の患者に、大量のデータ・情報を配布する必要がある遠隔医療機能に適しており、最近問題になっているインフォームドコンセントの実現などにも有利であることがわかった。
|