二人の乳児(1歳3か月から4歳までと2歳3か月から4歳まで)の食事行為の発達を縦断的に観察した。 観察は対象児の家庭での、一カ月で一回の食事をビデオで記録する方法で行った。記述した項目は、両親と乳児の距離、両親の発話、両親による乳児の食事の手や発話によるサポート、食材の種類と配置、乳児の両手の動き(相互の協調)、乳児自信の発話、乳児による食具の使用、乳児の手のマイクロな動きなどである。 昨年の報告では一児(T)の食事行為の発達を縦断的に観察し、このような栄養学で言うところの「口内折衷」が、ほぼ4年間の時間をかけて成立することを明らかにした。一方、本年度分析した乳児(H)では、そのような転換は45カ月に至っても十分には成立していなかった。Tがどの時期でも一分あたりほぼ2回つまり30秒に一回の割合で食材を転換しているのに対して、Hではほぼ80秒に一回の割合でしか食材を転換していない。またTにはよく見られた次の食材を探索する手による微小行為がHには稀に観察されただけであった。 この事実の背後にある「環境」が検討された、上述した事実に関連することとして両親による介入の方法(Tではほとんど介入がない。あっても言葉によるものが多い。Hでは手で食物を口に運ぶなどの介入が多い)、用意された食材の配置(T家では食材はめいめい配置され、Hでは大皿から両親が取り分ける)などが分析された。食事時の乳児の「意図の発生」が大きな意味での「環境の設計」と関連していることが示唆された。
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