テレマイクロサージェリにおける操作者の意図理解と情報変換型操作環境伝送の研究

1997 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 09221208
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 光石 衛 東京大学, 大学院・工学系研究科, 助教授 (90183110)
• 研究分担者: 渡辺 博義 国立研究所長島愛生園, 整形外科, 医員(臨床系)
• キーワード: テレオペレーション / テレマイクロサージェリ / マスタスレープシステム / 遠隔医療 / 意図の理解 / マルチモーダル情報提示 / インターネット / 実時間映像処理

研究概要

本研究では本年度は、約700km離れた場所にオペレーション・ルームとサージェリ・サイトとを置き、遠隔操作によって直径約1mmの人工微細血管の縫合を試みた。具体的には、東京大学をオペレーション・ルームとし、岡山県に存在する国際会議場の一室をサージェリ・サイトとして実験を行った。両サイト間はプロバイダの提供するインターネットで結合され1.5Mbpsのスルー・プットを有する。術者が操作する左右両手用のマスタ・マニピュレータに入力された位置、および、角度情報はリアルタイムOSを搭載した実時間制御用コンピュータからル-タ、インターネット、サージェリ・サイト側のル-タ、実時間制御用コンピュータを介し、左右両手のスレーブ・マニピュレータに送られる。一方、サージェリ・サイトに存在する可動型顕微鏡からの映像はコ-デック、サブネット、ル-タ、インターネット、オペレーション・ルーム側ル-タ、コ-デックを介して可動型液晶ディスプレイに送られる。また、スレーブ・マニピュレータの先端鉗子部に組み込まれた多軸力センサからの情報は聴覚情報に変換され、上記の映像情報と同じルートを介してオペレーション・ルームのスピーカに送られる。さらに、可動型液晶ディスプレイの上部に設けられた小型CCDカメラからの情報に基づき術者の姿勢の変化によって顕微鏡の視線方向、および、拡大率を制御する。また、術者が常に可動型液晶ディスプレイを正面から見ることができるようにディスプレイの姿勢が制御される。
構築したシステムを用い、整形外科医師の数回の試行による学習の結果、一針を縫うのに要した時間は5分〜10分であった。これは、顕微鏡下で術者が手で行なうのに要する時間と同程度から数倍程度である。インターネットによる画像伝送の遅れは約600ミリ秒であった。また、制御信号の時間遅れをUNIXのpingコマンドで測定したところ、応答時間は約10ミリ秒であった。

研究成果

• [文献書誌] 渡辺博義,他: "テレ・マイクロ・サージェリ・システムで使う術野のマニピュレータの工夫と問題点" 日本臨床バイオメカニクス学会誌. 18. 77-80 (1997)
• [文献書誌] 光石衛: "テレ・マイクロ・サージェリ(Tele-Micro-Surgery)" 日本ME学会雑誌. 11-8. 9-17 (1997)
• [文献書誌] Mitsuishi,M., et al.: "Tele-micro-surgery : analysis and tele-micro-blood-vessel suturing experiment" Proceedings of International Symposium on Experimental Rbotics(ISER'97). (1997)
• [文献書誌] Mitsuishi,M., et al.: "Tele-micro-surgery System" GasLESS international'97. 57 (1997)
• [文献書誌] 光石衛: "遠隔手術ロボット" 日本機械学会第74期通常総会講演会講演論文集. 5. 484-485 (1997)
• [文献書誌] 光石衛,他: "テレ・マイクロ・サージェリ・システム" 第36回日本エム・イ-学会大会講演論文集. 240 (1997)
• [文献書誌] 光石衛: "微細血管縫合のためのテレ・マイクロ・サージェリ・システム" 日本手術医学会誌. 18. 42 (1997)
• [文献書誌] 光石衛: "遠隔微細手術のためのシステム構成と知的ユーザ・インターフェイス" 第7回コンピュータ支援画像診断学会論文集. 123 (1997)