平成9年度においては、1.前年度で用いたpoly[isopropyl(p-nitrophenylcarbamoyl-oxy)neopentyl fumarate]よりも側鎖非線形単位の自由回転度を低下させたLB膜形成可能な高分子の合成、そのLB膜の非線形特性評価、及び、2.両親媒性C_<60>誘導体の合成とそのLB膜の非線形特性評価を実施した。 1.新規なフマレートモノマー、hydroxyisopropyl isopropyl fumarate(HiPF)、dihydroxyisopropyl fumarate(DHiPF)を合成、重合し、p-nitrophenylisocyanateと反応させて相当する非線形活性側鎖を有する高分子、Poly[isopropyl p-(nitrophenyl)carbamoyloxyisopropyl fumarate](PNHiPF)およびpoly[di{p-(nitrophenyl)carbamoyloxyloxyisopropyl}fumarate](PNDHiPF)を作成した。いずれのポリマーも純水副相上で安定な単分子膜を形成する。これらをLB-X膜あるいはスピンコート膜(コロナポーリング処理)とし、非線形光学特性を評価した。残念ながらいずれも非線形光学定数は1pm/V以下であり、側鎖の接続分子団であるカルバモイル基同士のランダムな水素結合が、親水-疎水規制力や外部電場に打ち勝つほど強いことが分かった。従って、カルバモイル基による接続ではなく、エステルなどの非水素結合性分子団に変更する必要がある。 2.水平付着法によりLB-Z膜を作成し、非線形光学特性を評価した。副相に純水を用いると限界占有面積が小さく、分子配向の乱れた膜となり、非線形光学効果は観測されない。しかし、副相に1N-KCl水溶液を用いると分子配向の揃った良質のLB膜が得られ、約25pm/Vの大きな非線形光学効果が観測された。これは、C_<60>誘導体の二次非線形性としては従来報告の中で最も大きな効果である。
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