本研究の物理目標は、日ロ共同気球実験(RUNJOB実験)で得られた観測データを解析して超重核宇宙線の強度を算出し、宇宙線起源に関する情報を得る事である。RUNJOB実験で使用した検出器の中には、スクリーンタイプX線フィルム(SXF)が多層的に挿入されている。SXFを重い原子核が通過すると、その飛跡は肉眼検出可能な黒化スポットとしてフィルム上に記録される。RUNJOB実験では、検出器を成層圏で150時間程度宇宙線に露出しており、SXF上には1cm^2あたり50〜100本程度の飛跡が記録された。これら膨大な数の黒化スポットをいかに処理し、有効な情報を取り出すかが当面の技術目標であった。 そこでまず、フィルム上の黒化スポットの座標と黒化度を自動的に測定するシステムを構築した。測定装置は大型の自動XYステージ、CCDカメラ、パーソナルコンピュータ、画像処理ボードからなっており、カメラで捕らえたフィルム上の画像から黒化スポットを自動認識し、その座標、黒化度を記録するソフトウェアを開発した。このシステムにより全ての層のSXF上に記録された、全ての黒化スポットの座標と黒化度を短時間で自動測定する事に成功した。 次にこうして記録されたデータを用いて、複数層を貫通した重粒子飛跡の組をコンピュータ上で自動的に選別し、飛跡の再構成を行った。こうして検出された重粒子群は主に鉄核であるが、これらについてその絶対強度と天頂角分布を算出し、人工衛星で得られた他グループの結果と比較したところ、絶対値で非常に良い一致が見られた。これにより、今回開発した測定システムによって鉄核より重い原子核がもれなく検出されている事が確認できた。 これらの成果をもとに、現在フィルムおよび原子核乾板上の飛跡のイメージデータを使って鉄核と超重核を効率良く分離する方法について検討中である。今後この荷電分解能の問題を早急に解決し、超重核の絶対強度を算出する予定である。
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