PSR1259-63は連星系の中にある若い電波パルサーである。相手の星はBe星で、それは高速で自転し、その赤道面にそって質量放出を起していることでよく知られている。1keV-200keV領域でのスペクトルはベキ型で、X線強度にパルスはみられない。この事から観測されたX線はパルサー本体からの放射ではなく、パルサー風とBe星風との相互作用でつくられた相対論的電子による非熱的放射と考えられる。PSR1259-63システムにおけるX線、ガンマ線の放射メカニズムを明らかにすること、および得られた相対論的粒子のスペクトルをもとにパルサー風や粒子加速メカニズムおよびBe星風の性質について知見を得ることを目的として本研究を開始した。ここ一年間の研究により次のようなことが明らかになった。 1.パルサー風とBe星風との衝突で衝撃波ができ、そこで電子は加速され、相対論的エネルギーになる。X線はこの相対論的エネルギーの電子からシンクロトロンプロセスによって放射される。 2.近星点で急な傾きのX線スペクトルを与える電子のエネルギー分布は、逆コンプトン散乱によってはできない。急な傾きの電子分布の原因はシンクロトロン放射である。 3.近星点近傍と遠星点近傍でのX線光度の違いから、パルサー風のmagnetization parameterがパルサーからの距離とともに減少することが示唆される。 4.TeVガンマ線は近星点と遠星点との中間ぐらいの位置で最も強く、観測にかかる可能性がある。
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