VLSIデバイスは性能向上のため急速に微細化しているが、微細化が進むと各種ばらつきが特性に大きく影響を及ぼすようになる。特に、チャネル中の不純物数の統計的な揺らぎは本質的な問題である。これは、サイズが全く同じデバイスであっても、デバイス中に存在する不純物の数は一定ではなく、統計的にばらつくという問題である。この不純物数の揺らぎがそのままデバイスの特性ばらつきとなる。このようなばらつきはデバイスが微細化するほど顕著になることは自明であり、将来のVLSIデバイスの限界を決める要因になりうる。本研究では、不純物揺らぎによる特性ばらつきを抑制する方法として、デルタドープ型MOSデバイスを提案した。このデバイスは、チャネル部分が高不純物濃度の下層と低濃度の上層の2層で構成されており、最近のディープサブミクロンデバイスで主流となりつつあるレトログレードチャネル構造をモデル化した構造である。まず、解析的にデルタドープMOSFETのしきい値電圧を求め、通常の均一ドープMOSFETと比較してデルタドープMOSFETは不純物揺らぎによるしきい値電圧ばらつきが本質的に小さい構造であることを明らかにした。また、低濃度層膜厚と高濃度層不純物濃度を適当にバランスさせることにより、しきい値電圧ばらつきを一定に保ったままデルタドープMOSFETを微細化する新しいスケーリング法を開発した。以上の結果から、デルタドープMOSFETは、短チャネル効果を抑えつつしかも不純物揺らぎを抑えることができ、将来のサブ0.1μm世代の有望なVLSIデバイスデバイスであることを明らかにした。
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