本研究のために新たに^3He-^4He希釈冷凍機用の内部摩擦測定装置を組み立てている。0.1Kまでの内部摩擦の応力振幅依存性測定(ADIF)のため、広島大学低温センター内の^3He-^4He希釈冷凍機を用いることを予定しており、試料容器の作製、信号ケーブル配線の改善を行った。内部摩擦の測定方法として、高い精度で音波の内部摩擦、応力振幅が測定可能な複合振動子法を用いる。具体的には、駆動および受信用の水晶振動子の試料を接着して水晶振動子の中心部のみをワイヤーで支持するが、Mixing Chamberとの熱接触のため^3Heガスを試料容器に導入する必要がある。^3Heガス注入のため、^3Heガスボンベを購入しアダプターを作成した。試料となるPb希薄合金単結晶の作成もすでに行い、1.6K以上の予備的測定から、転位と不純物原子の相互作用が、超伝導、常伝導状態にかかわらず、基本的にはこの温度までは熱活性過程に支配されていることが確認された。従って、今後0.1Kに至る測定を行ってトンネル過程へのクロスオーバーを観測する予定である。 上記に加えて、当研究者はイリノイ大学物理学科のGranato教授グループとの共同研究の結果としてAl中の転位のトンネル効果を示す確かな結果を得ている。すなわち超伝導状態において0.5K以下でADIFの温度依存が消失している結果を得たのである。常伝導状態におけるADIFについては、最近精密な測定に成功し、0.7K付近から熱活性過程の予測に比べ温度依存が小さくなることがわかり、現在イリノイ大学のグループと解析を続けている。その成果は第52回物理学会年会および重点領域研究「多自由度系としての原子集団及び原子のトンネル現象」公開シンポジウムで発表した。
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